アフガニスタンの失われた刺繍 ― 西垣敬子コレクション
商品番号:9784900277366
アフガニスタンの失われた刺繍 ― 西垣敬子コレクション
発行:かんぽう
テキスタイル・衣装図版60点/アフガニスタンの生活・文化を紹介する写真を多数収録
主な内容
◆女性の視点でのアフガニスタン支援
◆アフガニスタンの女性と刺繍/西垣敬子(宝塚・アフガニスタン友好協会)
◆心をつなぐ刺繍/戸矢崎満男(神戸芸術工科大学教授)
◆テキスタイル・コレクション
◆支えたい想いがすべてを越えてゆ/滝谷昇(アフガニスタン義肢装具支援の会)
◆孤児の少女フルーザン
◆TAFA(宝塚・アフガニスタン友好協会について)インフォメーション
◆あとがき
刺繍と染色(本文から)
手の込んだ美しい刺繍によるテキスタイルは世界各地で残されている。アフガニスタンにおいては、刺繍の上手なことが夫人の誉れになると聞く。女性のたしなみとして、日本であれば「お茶」や「生け花」ができるということ以上に、アフガニスタンでは刺繍が欠かすことのできない生活文化になっているのだろう。
源のインドから遠く極東に伝わって、長い時間をかけ、染色工芸は日本において極めて高度な技術となった。日本では、織物よりも染物の方が高級であるとの価値観が生まれた。日本刺繍に特徴的なのは、染めによって描き出された柄に立体感をつけるのが多いことである。日本で染めが発達したのは、まぎれもなく水の豊かな風土ゆえである。とすれば、乾燥地帯のアフガニスタンにおいて刺繍がテキスタイルの重要な要素となるのも当然のことだ。遊牧騎馬民族の人々にとっても、布と糸と針があれば刺繍はできる。
今、異国の地から我々がアフガニスタンに思いを寄せること。一人の日本女性がアフガニスタンの刺繍からその地に興味を持ち、やがて復興に大きな役割を果たすようになること。それは全てが日本と対極をなすその地に、日本にあってアフガニスタンに無いもの、アフガニスタンにあって日本が失ったものを知り、引かれあうからではないだろうか。