父の遺した「シベリア日記」
商品番号:3010157785
父の遺した「シベリア日記」
-35年目の帰還-
終戦から35年を経て書きしるされたこの日記を,最高裁判所営繕課の主任技官であった父から託されて,世に出す決意を固めた筆者は,生前の父からもっと話を聴いておくべきであったという後悔とともに,父の生立ちから戦後までの時代的背景を掘り下げてみて初めて日記に秘められた実際に抑留生活を強いられた者でしか表しきれない平和への強い祈りを肌で感じとることができた。
今や単なる紙片でしかないロシア政府から交付された労働証明書は,対価で置き換えることのできない苛酷なシベリア抑留の事実の証明である。
父の日記に綴られている内容は,辛く悲しいものばかりではなく,異境の地で味わった青春の片鱗も飄々と表されている。また,戦争は憎んでも,人を憎まずといった人種間を超えた人間味溢れる内容となっていることに筆者は感動を覚えた。
庭を眺めながら孫娘を膝に抱いて,「戦争は何があっても絶対にしてはいけない。」とつぶやく父の後ろ姿が幻のように浮かぶのであった。